かわさき芽吹塾 代表 吉沢春陽
「教育をお金で買う現状を少しでも・・・」
新型コロナウイルスによって人々の行動が大幅に制限されていた2020年10月(大学1年)、高校の同期である菊水優太にそんな思いを伝え、「無料塾をつくりたい」と声を掛けました。
そして、彼から「自分にやれることがあるなら一緒にやろう。1人でも多くの子どもたちの悩みを解消したい」と返事があり、無料塾開校の準備が始まりました。
「かわさき芽吹塾」は2021年5月から神奈川県川崎市の高津区と中原区で活動している無料塾です。生徒は中学生に加え、講師が大学受験を終えて間もないことを生かし、高校生も対象に学習支援を行っています。当初は高津校のみでしたが、さらに多くの中高生に支援が行き届くよう、中原校を新設しました。私たちの小さいながらも熱い思いは少しずつ実を結び、その思いの輪を広げてきました。
総勢約100名の大所帯ですが、これらを取りまとめるのが運営メンバーです。生徒の進捗管理や助成金の申請、自治体との協議といった業務を行っています。また他にも、月1回で開催しているイベントの企画等を行う企画部、SNSの運用やチラシの作成を行う広報部があります。
講師は主に大学生で、本業である学業やアルバイト、サークル活動などを両立しながらという人がほとんどです。忙しい学生生活の合間を縫ってこの塾に参加してくれる理由は人それぞれです。「普通の大学生では経験できないようなことを経験できたり、学べることがたくさんあるから」、「コミュニティができる現場を肌で感じ、経験や知識を生かして地域の子どもたちに貢献できるから」。ここでは紹介しきれませんが、講師1人1人がそれぞれの思いを胸に秘め、今日も生徒のために活動しています。
開塾以来、多くの子どもたちが高校・大学を受験し、見事全員が合格を勝ち取ってきました。公立高校を受験した生徒の中には、経済的理由から私立高校を併願することができない子もおり、”落ちることはできない”というプレッシャーを感じながらも、そのハードルを乗り越えてきました。「勉強に苦手意識があったが、芽吹塾のおかげで勉強の楽しさを知ることができた」、「芽吹塾を通して、一歩外に踏み出す勇気を手に入れた」。受験生の実際の声を聞き、彼らの成長を目の当たりにし、これからもこんな光景を毎年見ることができたらと願っています。
私の人生を変えたのは「塾」という存在でした。中学生の時、塾の先生は全く勉強ができない自分に親身になって教えてくれたことがあります。勿論、塾に通わずに1人で勉強ができる人もいると思いますが、当時の私にとっては教えてくれる人の存在が大きかったです。また、現代の教育において「塾」を利用している人がほとんどで、なくてはならない存在となっています。同じように、1人で勉強することで困っている子どもたちを救いたいと思い、無料の塾を設立しました。
私はこれまでに教育のおかげで様々な目標(夢)を掲げ、挑んできました。その中でも既に達成できたものもあれば、これから達成していくものもあります。いざ大学生になって様々なことに挑戦しようとした時に、これまで何となくやっていた勉強が生きています。凡人である私も勉強を通じて、見えなかった世界が少しずつ見えてきました。また、勉強に加え、周り(仲間)のサポートなしでは成し遂げることができなかったことがほとんどで、無料塾を設立、活動する際も周り(仲間)のサポートがあってこそでした。だからこそ、子どもたちにも周りを頼って、色々なことに挑戦し、多くの夢を抱いてほしいと思っています。
2021年の流行語大賞で「親ガチャ」という言葉が選ばれてしまいました。この言葉の意味は家庭環境によって人生が左右されるということを一言で表したものです。このような言葉が流行してしまう今の時代、私は子どもたちに希望を与える人でありたい。
そして、この塾の目指すところは教育格差をなくすことです。無料塾はあくまで応急処置であり、教育格差の根本である社会福祉・教育システムの改善こそが、根本的な打開には不可欠です。そのために私たちが取り組んでいることを多くの方に知ってもらい、行政が動くきっかけとなるように、これからも活動を続けていきます。
かわさき芽吹塾 代表 吉沢春陽
(中央大学総合政策学部 4年)